研究概要 |
本研究は、ラット灌流心モデルを用い、通常の心筋保護法ではその保護効果に問題を有する肥大心における細胞内イオン(Ca,Na)細胞内pHの変動を通常の再灌流施行時との比較において検討すること、ならびに虚血中の細胞外pH環境を変化させた状態でのCaイオン動態の検討をすること。および容量負荷肥大心の組織学的検討並びに癌遺伝子の発現について検討し、以下の結果を得た。 (1)腹部大動脈-大静脈の短絡作成後4週で心筋重量が2倍になった肥大心筋群で、虚血20分後及び再灌流5分後の細胞内Ca及びは正常心筋に比し有意に高値であった。 (2)肥大心筋群においても正常心筋群と同様、再灌流時にterminal cardioplegiaを施行することにより再灌流時に発生するCa濃度の一過性上昇が抑制され、teminal cardioplegia非施行時に比し早期に細胞内Ca濃度が正常化され、心機能回復率も有意に高値となった。 (3)正常心筋群の無酸素-酸素化モデルで再灌流時に細胞内pHの二峰性の変化が認められた。再灌流直後に一過性にpHの低下を認め10-15分後にかけて次第に上昇した。 (4)ラット灌流心の無酸素-再酸素化モデルにおいて細胞内Naの変化についても検討した。その結果、細胞内Na濃度は虚血20分後に虚血前値と比し有為に上昇した後、再灌流10分後に正常化することがあきらかとなった。 (5)容量負荷による心肥大モデルにおいて心筋細胞の肥大は負荷後2週目より認められたが、免疫組織染色によるc-mycの発現に関する検討では、容量負荷後2時間目より既にc-mycが発現していることが証明された。
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