研究概要 |
虚血心筋を対象とした心停止液ならびに再潅流液についての研究が数多くなされ、我々も一連の研究の中で虚血心筋に於ける保護液・再潅流液中の至適Ca濃度がMg濃度と密接に係わりを持つことを証明してきた。一方、現在一般的に用いられているFremes液に代表される常温下高K持続心筋保護液(CWCP)は、基本的には虚血心筋に対する心筋保護液のイオン組成類似であり、理論的に虚血心筋とは異なる持続潅流下停止心に対して、同様の保護効果を示すか否かは明らかでない。そこで、本研究においては心機能回復に於ける高K持続冠潅流液中の無機イオン(特にCa2^+,Mg2^+)の相互関連性を明確とすることを目的として以下の実験を行なった。 (実験1)常温下(37℃)高K持続心停止液中の至適Ca濃度に関する研究:高K持続心停止液中のCa濃度を0.1〜2.5mMと変化させ4時間の心停止を行い、Ca濃度が停止後心機能回復に影響すること及び0.5mM以下の時Ca paradoxを来たす危険性があること及びCaの至適濃度が1.5mM付近に存在することを明らかにした。 (実験2)常温下(37℃)高K持続心筋保護液におけるMg,Ca濃度の影響に関する研究:高K持続心筋保護液中のMgを1.2,8.0,16mMの3群、Caを0.1,0.3,0.5,1.0,2.5mMの5群に分けそれぞれの組み合わせにより180分の心停止を行った。結果は低Ca濃度(<0.5mM)ではMg添加濃度に比例してCa paradoxの危険性が増大したが、Mg添加はCaの至適濃度には影響せず、虚血心筋とは異なる効果を示した。
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