1.実験群:左肺のうち、後葉のみを同所性に再装着(移植)する術式を犬をモデルに作製した(n=26)。 2.手術時間:前期症例(症例1-15)では平均244±61分、後期症例(症例16-26)は156±15分で有意に短縮した。 3.手術成績:前期症例では12例が術後3日以内に死亡した。後期症例では、術後3日以内死亡は3例(うち犠牲死2例)であった。死因は犠牲死10例で術後3-742(平均141)日で犠牲死せしめた。犠牲死を除く術後3日以内死亡13例中8例は肺鬱血、肺水腫により、術後4日目以降死亡の3例は全例感染死と考えられた。 4.吻合部の剖検所見:術後3日以内死亡例では気管支、動脈、静脈の吻合部の癒合は認められなかった。術後4日目以降死亡11例のうち4例に気管支吻合部の肉芽増殖による狭窄あるいは閉塞を認めた。また動脈、静脈の吻合部にも狭窄、閉塞を認める症例が散見され、血栓の形成とともに最も重大な合併症であった。 5.胸部写真(術後2-4週で撮影):8例中5例に浸潤影を認めたが、他の3例は含気伸展ともに良好であった。 6.動脈血ガス分析(n=8):術前PaO_2は87±9.8mmHg、PaCO_2は29±5.9mmHg、術3日後はPaO_2は76±10mmHg、PaCO_2は31±8.0mmHgであった。 7.26例中5例に摘出肺の灌流液中にprostaglandin El 200mugを添加したが、添加しない症例に比して実験結果に明かな差は認められていないが、その有効性については現在の段階で判断し得ない。 8.本術式の技術的問題点は、末梢側の気管支、肺動脈、肺静脈の縫い代の確保と、吻合径の差にあるが、手技の熟練により、手術成績は向上し長期の生存が可能となった。また移植肺の機能も確保可能な術式であると思われ、臨床的にも、症例によっては本術式の適応も考慮され得ると思われる。
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