心臓血管外科領域で開心術などに於いて現在広く用いられている人工心肺は、ガス交換を行う肺の部分と血液を送脱血するポンプとは完全に分離している。今回、ガス交換を行う肺の部分にポンピング機能をも有する新しい人工肺を、体外循環回路の短縮と酸素化効率の向上を目的として設計試作した。これを完成させることによって人工心肺を小型化し開心術などの手術及び術前、術後の心肺補助に使用することが本研究の目的である。本研究は8年前の昭和62年から独自でポンピング機能を有する人工肺を試作し機能実験を行った。最初に試作した人工肺はシリコンゴム製、厚さ0.25mm、面積270cm^2の平板膜に人工呼吸器をポンピング用機器として使用して酸素を吹送しながら血液を送り出すことによってガス交換とポンピング機能を同時に行うものである。この平板型の試作1号器は動物実験でガス交換能が不十分であった。その後、種々改良を加え平成5年度からはシリコンファイバーの内経の異なる製品を使いガス交換能を中心に実験を行った。ポリカーボネイトシリンダーに、1500本のシリコンチューブを束ね、エラスティックシリコンフィラーでパックした。シリンダーの流入側と流出側にはボール弁を装着した。人工肺の有効面積は7.4×10^<-2>m^2であった。膜はガス側に100%酸素を送りながら気体による駆動ポンプで駆動された。模型テストで、1.7×10^<-6>m^3S^<-1>の生食水の酸素分圧は、人工肺の流入側で0.7×10^4Paが流出側では7×10^4Paに上昇が認められた。この試験の結果、本研究で開発したポンピング機能を有する人工肺はバイパス回路の短縮化およびガス交換能率の向上に対して有効であることがわかった。今後、更に動物実験などによりシリコンファイバーの適正な、本数・長さ・経を決定することが目標である。
|