研究概要 |
1.正常冠動脈,大伏在静脈グラフト(SVG),内胸動脈グラフト(LITA)内での圧-流速関係を分析し,以下の研究成果を得たのでその概要を報告する。 2.〔研究方法〕正常左冠動脈12本,左冠動脈へのSVGグラフト11本,左冠動脈へのLITAグラフト7本を対象に,心カテ時に20MHzDoppler catheterを用いて,正常冠動脈及び各グラフト内の冠流速(V)波形を記録した。同時にmultisensor catheterにより大動脈圧(P)の測定も合せて行い,得られた拡張期各時相のVとPの一次回帰式よりV=0となるPの値を有効下流圧(Pfz)として求めた。次いで次式より冠血管抵抗(CR)値を求めた。 CR=Pm-Pfz/Vm,ここでPm及びVmは拡張期任意の時相におけるP及びそれに対応したVの測定値を示す。 3.〔結果〕正常冠動脈(対照群),SVG群及びLITA群でのPfzとCR値を以下に一括して示した。 正常冠動脈(対照群) SVG群 LITA群 Pfz(mmHg) 58±12.0 56±22.2(n-s) 50±21.3(n-s) CR(mmHg/ml/min) 4.5±2.4 8.0±3.6(pL0.01) 5.3±2.8(n-s) 3群間のPfz値には有意差はなかったが,SVG群のCR値は対照群及びLITA群のそれよりも有意に高値を示した。 4.〔考察及び結語〕Pfzは心筋内冠血管トーヌス,即ち心筋内レベルでの冠血管抵抗を反映することが知られている。従って,3群でのPfz値に有意差がなかったことは,先のCRは正常冠動脈及び各グラフトのconfuitとしての抵抗値をそのまま反映したものと判断してよい。 以上,グラフト内の圧-流量関係から得られたCR値からはLITAがSVGよりも優れたグラフト機能を有することが示唆された。
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