半導体レーザーは、ペインクリニック等で、臨床応用されてきたが、低出力、長波長のため従来の腫瘍親和性光感受性物質を用いた光線力学的治療法(PDT)への応用は不可能であると考えられてきた。しかし664nmの波長で100〜500W/cm^2という出力をもつ半導体レーザーが開発されたため664nmに吸収波長をもち体内排泄時間が短い等の優れた特徴をもつNPe6を用いた高い腫瘍効果が期待され始めた。使用した半導体レーザー光線力学的治療装置は小型であり持ち運びが可能である。また、この装置は従来のPDT用のレーザー装置と比べて、出力、波長の安定性、半値幅が狭いこと、操作の簡易性、メンテナンスが不要であること等の点で優れている。レーザー照射面の出力状態をCCDカメラにて捕え画像処理したが照射面のレーザー出力が、ほぼ均一になっているのが確認された。レーザー照射後50日間を延命期間として生存率を治癒率と判断し検討した。また同一条件にてPDTを施行しH-E染色標本を作製した。 NPe6投与量が2.5mg/kg以上、レーザー照射量50J/cm^<-2>以上で治療効果が認められた。特にNPe6投与量7.5mg/kg、レーザー照射量100J/cm^<-2>での治癒率は67%と良好でありNPe6投与量の増加にともない治癒率も上昇した。未治療群のマウスのH-E染色標本では、壊死をともなう腫瘍が一塊になって存在していたのに対し、完全治癒したマウスのH-E染色標本では、組織学的に腫瘍は完全に消失していた。 今回の研究を通して腫瘍照射面に均一でNPe6を励起するのに充分な出力のレーザー光が半導体レーザーにより得られ、PDTが可能であった。PDTは非観血的な優れた悪性腫瘍治療法であり今後ますますの研究が望まれる。
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