研究概要 |
【はじめに】我々は体内排泄時間が短い等の優れた特徴を持つNPe6の吸収帯に対応した664nmで比較的高出力(100〜500mW/cm^2)のレーザー光を発振することが出来る半導体レーザーを開発し、現在までに両者を用いたPDTの高い治療効果を確認し報告した。今回、このPDTにおける腫瘍内NPe6の分布と治療効果の関係を検討することにより、総レーザー照射量と治療効果の関係及びPDT後の腫瘍再発の原因を究明することを試みた。 【方法】5.0mg/kgのNPe6を尾静脈投与し、投与5時間後に腫瘍径1.0cmに対し照射径1.4cmのレーザー照射を行った。出力は100mW/cm^2に設定し、総照射量50,100,150,200J/cm^2の各条件について各群10匹のマウスに対してPDTを行った。50日間の生存率を治癒率と判断し、比較検討した。PDT後ただちに腫瘍を摘出し腫瘍の上面より3mmの面で水平に割面を入れ、その面におけるPDT後の残存しているNPe6量の表面蛍光を測定した。蛍光測定はmicrosurgeryの領域で使用されている手術顕微鏡を改良した蛍光画像診断装置を用いて腫瘍表面のNPe6を405nmで励起し670nmの蛍光画像で捉え解析することによって行った。その後、各群の蛍光量の平均値を算出し比較検討した。 【結果】(1)50,100,150,200J/cm^2のレーザー照射での治療効果はそれぞれ20,50,70,90%であり総レーザー照射量の増加に伴い治癒率も増加し正の依存関係にあることが認められた。(2)レーザー照射50,100,150,200J/cm^2後のNPe6残存量はcontrol群(レーザー照射OJ/cm^2)と比較して各々73.4,36.0,22.0,15.9%であった。 【結語】NPe6と半導体レーザーを用いたPDTの治療効果はLaser照射量に依存していると考えられた。今回PDTにおける腫瘍再発の原因は腫瘍深部のNPe6の残存、つまりは到達したLaser energyの不足に起因することが示唆された。
|