本年度は、補助循環制御装置ならびに自動制御プログラムの開発を進めている。送血ポンプにはローラー型拍動流ポンプまたは遠心ポンプ、脱血はポンプおよび落差両方式に対応する装置を予定しており、マイコンより直接に制御できるローラーポンプ、電動リザーバ・エレベータを開発し、さらに遠心ポンプ用インターフェース装置、電磁チューブクランプ装置を試作中である。制御方法は、脱血流量に応じて送血流量を可変する方法、動脈圧に応じて送血流量を調整する方法の2方式を検討し、コンピュータ・シミュレーションを行っている。また、送脱血にローラーポンプを用いた方式では、中心静脈圧によって脱血流量を制御するプログラムを開発し、動物実験および臨床使用において改良を続けている。本年度は、3例の動物実験及び12例の小児開心術の体外循環に用い、全例良好にウイニングした。いずれの制御方式も比例積分制御を用い、制御ゲインを患者体重から設定する。シュミレーションの結果では、3方式のいずれも、両心バイパス、左心バイパス共に安定に制御できると考えられる。しかし、実際の臨床使用の経験からは制御方式そのものよりも、手術操作などが血圧測定値に及ぼす外的変動を如何に検出、低減するかが制御の成功を左右する要因であることが明らかである。このため、外乱検出アルゴリズムを考案し使用した。その結果、人的要因と思われる外乱の90%以上を検出することが可能であった。また、外乱は、最長でも12秒以上連続することはなく、その間は過去の平均流量を保つことで安定に制御可能であった。
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