平成5年度は、昨年度に引き続きバンディング装置の改良を行った。最終的に試作した装置は直径5mm長さ28mmのスクリュー部となり、1回転あたり血管周囲で0.3mm、断面積で0.07m^2とより微細な調整が可能となった。動作もよりスムーズなものとなった。動物実験でのテストも問題なく、確実に絞扼程度を調整できた。また、スクリュー部の調整位置を皮膚の上からも分かるようにネジ部を突出させたタイプも試作したが、皮下組織を巻き込んでうまく動作しなかった。絞扼程度の確認はX線透視しなければならないが、実際には血中酸素濃度をモニタリングしながら調整している。最終試作品も、微細な構造のため量産は困難であり、製作コストを下げることはできず、依然として適応は限定されたままとなった。 最適な絞扼状態の解明のため、左室低形成症候群の標本より肺動脈血管のモデルを採寸し、シリコンRTVゴムを用いて血管モデルを製作し、水実験において絞扼程度と流量の関係を検討した。その結果、体-肺動脈短絡路の絞扼調節で肺動脈流量を0まで可変することが可能であったが、肺動脈/動脈流量比は体循環の抵抗で大きく変動し、絞扼程度の調整だけでは適切に保てないこともわかった。 5年度も適応となる症例はなく、臨床使用はなかった。
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