研究課題/領域番号 |
05671141
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
田宮 浩一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00075574)
|
研究分担者 |
別府 俊幸 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (30181481)
東舘 雅文 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90138917)
|
キーワード | 大動脈弁開口部断面積 / 大動脈弁輪径 / 生体用電磁式面積計 |
研究概要 |
本年度中に約50頭のイヌを用いて大動脈弁の開口面積、上部大動脈弁輪(弁交連部の付着部)下部大動脈弁輪(弁腹の付着部)の断面積を直接計測する動物実験を行った。この実験では同時に左心室圧、大動脈圧、大動脈血流量を計測している。正常の洞調律では上部弁輪面積は大動脈圧とほとんど同じ変化をした。これは大動脈弁遠位部(上部弁輪)は大動脈圧により受動的に拡大、縮小をしていることを示す。一方下部弁輪では血液駆出がはじまる50msec前から変化をはじめ心室収縮初期に心房収縮に一致した減少を、ついで心室収縮及び大動脈弁開放に一致した断面積増加をしたあと駆出による心室体積減少に一致した断面積減少を示し、これが下部弁輪面積の最小値となる。これに対して心室性期外収縮の場合には大動脈弁口が増加(弁解放)を開始する時期には、血液駆出を伴わない心基部から始まる心室収縮により下部弁輪は収縮する弁開口部と下部弁輪のパラドキシカル・ムーブメントが高頻度に観察された。この場合は大動脈弁の開放が遅れるのも観察された。この現象は正常の洞調律で見られる弁開口時に下部弁輪面積が増加し、弁閉鎖時には下部弁輪面積も現象する現象が、大動脈が心周期に同期して開くときは開きやすく閉じるときは閉じやすくなる構造を依存していて、その構造の基本的な部分は大動脈弁の基部が左心室筋に固定されていて心筋収縮による変形を受けていること考えられる。この現象の存在は従来の心内の弁が大動脈血流と血圧による流体力学的な力で弁が開閉動作をおこなうという観念を変える必要があることを示唆する。また大動脈の最大開口面積は大動脈血流よりも大動脈内圧をよく反映するのが観察された。大動脈に人工的な極端な狭窄を作成して大動脈圧を250mmHg以上に上昇させると大動脈弁輪面積も極端に増加して弁閉鎖が遅れるために逆流を発生し、そのため大動脈圧の上昇がある程度以上に進行しないのも確認された。これは一種の生体防御機構と考えられる。
|