研究概要 |
研究の第一段階として、16株の継代glioblastoma cell lines,11症例のglioblastoma組織標本、培養成人正常astrocyte、胎児正常astrocyte、成人正常脳組織にて各種のサイトカイン受容体遺伝し発現をRT-PCR法にて調べた。検討した受容体はIL-1typeIとtypeII受容体、p75とp55TNF受容体、IFNα/βとγ受容体、GM-CSF,G-CSF,M-CSF(c-fms)各受容体、stem cell factor(CSF,c-kit)受容体、IL-6(gp80)受容体,IL-8 typeB受容体である。IL-1R typeI,p55TNFR,IFNα/βR,IFNγRは16株のcell line全てで陽性であった。IL-1R typeII,p75TNFR,GM-CSFR,M-CSFR,SCFR,IL-6R,IL-8Rは各々13,8,7,8,14,3,1細胞株で陽性であった。正常astrocyteはIL-1R,p75TNFR,p55TNFR,IFNα/β,IFNγR,M-CSFR,SCFRを発現していた。正常脳組織はIL-1RtypeI,IL-1RtypeII,IFNα/βR,M-CSFR,SCFRが陽性であった。11例のglioblastoma組織中にIL-1RtypeIは11例、IL-1RtypeIIは10例、p75TNFRは9例、p55TNFRは9例、IFNα/βRは10例、IFNγRは10例、GM-CSFRは2例、G-CSFRは3例、IL-8Rは8例、M-CSFRとSCFRは11例に発現が認められた。これらの結果は近く誌上に発表の予定である。本年度の研究計画としては、各受容体のligandとなるサイトカイン発現を遺伝子および蛋白レベルにて検討し、腫瘍細胞株(invitro)および主要組織(in vivo)でのサイトカインネットワークの存在を検討する。これは腫瘍細胞自体のサイトカインとその受容体の同時発現によるautocrine機構、また腫瘍に浸潤するTリンパ球あるいはマクロファージ、血管内皮細胞と腫瘍細胞との間のサイトカインシグナル交換(paracrine機構)を明らかにするためである。さらに他因子を誘導するpotentialのあるTNF,IL-1などの基幹的サイトカインについて、その受容体下の核内転写因子発現との関係を探り、さらにp53遺伝子異常との関連を検討する予定である。
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