研究概要 |
本研究ではまず,ヒト悪性神経膠腫におけるサイトカイン・成長因子の遺伝子発現についての検討を行った。研究の結果,glioblastoma細胞はInterleukin 1α(IL-1α),IL-1β,IL-1 receptor antagonist(Tada et al.J Neuroimmunol,50),IL-6,IL-8(Sakuma et al.J Neurooncol 15),GM-CSF(Murata et al.Neurol Med Chir 33)などのinflammatory cytokine遺伝子を発現,蛋白レベルでの産生を行うことが明かとなり,それぞれ誌上発表を行っている。またIL-8については,77アミノ酸型の特殊な形の蛋白産生が明かとなった(Tada et al.J Neurooncol 15).一方各因子に対する受容体発現についてはPCR法を用いて,IL-1 receptor type I,II,TNF receptor p75,p55,Interferon-αβ,γ receptor,G-CSF receptor,GM-CSF receptor,M-CSF receptor,stem cell factor receptor(SCF-R),IL-6 receptor,IL-8 receptorに関して,神経膠腫細胞(in vitroおよびin vivo)と正常astrocyteとの比較を行い,基本的にはastrocyteと腫瘍細胞では発現receptorに本質的な差がないことが明かになった(Tada et al.J Neurosurg 80).またTNF receptorについての詳細な解析を行い,神経膠腫細胞で主な機能的TNF receptorはp55 TNF-Rであることを明かにし(Kato et al.Neurol Med Chir 35),TNFが腫瘍細胞の増殖抑制を起こす場合G1 phaseへの集積が起こることも明かにした(Cheng et al.Neurol Med Chir 34).これらの結果からautocrine loopがglioblastomaで存在する因子はIL-1,TNF,SCF,M-CFSであることが判明した。IL-1 autocrine,TNF autocrine-loopはいずれも,核内転写因子のc-fos,c-junを介するAP-1結合部位あるいはNF-kappa Bを介する転写調節を介して他のサイトカイン遺伝子発現を2次的に誘導している可能性が示唆された。これらに関しては現在,研究遂行中であり,近い将来成果を発表する予定である。
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