研究概要 |
(1)サルの実験的脳血管攣縮モデルを用いて実験を施行した。開頭を行い、右側脳主要動脈周囲に自家凝血塊を置き、クモ膜下出血を作成した。クモ膜下出血作製前、3、7、14日後に脳血管撮影を施行し、脳血管攣縮の経時的変化を検討した。クモ膜下出血作製7日後において右側の脳主要動脈は最も強度な血管攣縮を示し、攣縮動脈の潅流領域では脳血流の低下とともに、全身血圧の変動に対しての脳血流の自動調節能は全く消失していることが解明された。 (2)脳血管攣縮時において、全身血圧を段階的に低下させると、攣縮動脈領域の頭頂葉より記録した体性感覚誘発電位の潜時は有意の延長を示した。 (3)実験的NMR装置を用いて,31P-spectroscopyの手法により脳血管攣縮時の脳組織のリン化合物の代謝(エネルギー代謝)の変化を観察した。平均血圧を段階的に低下させると、攣縮動脈の潅流領域の脳組織ではATPや有機リンの減少に加えて、無機リンの増加が観察された。低血圧状態の持続は、攣縮動脈の潅流領域の脳組織での高エネルギーリン化合物の著しい枯渇をきたすことを観察した。 (4)血管攣縮の各時期における脳組織の神経細胞、膠細胞の虚血性変化を抗アルブミン抗体を用いた免疫組織学の方法、好銀線維染色の方法にて観察した。血管攣縮極期と寛解期には、攣縮動脈の潅流域の脳組織では神経細胞および膠細胞は選択的に虚血性変化を示し、一部は可逆的であることが考えられた。
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