研究概要 |
1)プロトンMRスペクトロスコピーによる観察 クモ膜下出血後(SAH)の遅発性脳血管攣縮時の、攣縮動脈灌流域での神経細胞の代謝の変化をプロトンMRスペクトロスコピーの方法を用いて観察した。サルの血管攣縮モデルを用いて、SAH作製前、及び7日、14日後に、臨床用のMR装置(1.5T)にて、両側頭頂葉よりプロトン・スペクトロスコピーの測定を行なった。プロトン・スペクトラムよりCholine-containing compound(Cho)、creatineとphospho-creatineの総和(Cr)とN-acetyl-aspartate(NAA),各々の組織レベルを計算し、NAA/Cr比、とCho/Cr比を評価した。攣縮極期の攣縮側頭頂葉では、SAH前に比して、Cho/Cr比は有意の上昇を、NAA/Cr比は有意の低下を、攣縮の寛解期にても、NAA/Cr比の有意の低下が観察された。 2)脳組織の病理組織学的変化 MRスペクトロスコピーの測定後に、灌流固定後、脳を摘出し、病理組織学的検索を行った。H-E染色では、SAH作製7日、14日後の攣縮側の大脳半球においても明らかな脳梗塞巣は観察されなかった。しかし、cresyl violet染色では、攣縮脳動脈の灌流域の大脳皮質さらにはwater-shed領域にて一部の神経細胞(総神経細胞数の10%以下)に虚血性細胞壊死像が認められた。 3)まとめ 脳血管攣縮時の攣縮動脈灌流域での脳血流の低下は、神経細胞の代謝障害を引き起こし、一部の神経細胞は選択的に壊死に陥ることを示した。
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