脳虚血における神経細胞死の病態を解明することを目的とし、まず砂ネズミの一過性脳虚血モデル(両側総頚動脈10分間閉塞)を作成し、大脳、線状体、海馬CA1領域の遅発性神経細胞死の存在を確認した。また、TUNEL法により、これらの神経細胞の一部はDNA断片化を伴うことを証明した。蛋白合成阻害剤であるcycloheximideとendonuclease阻害剤であるaurintricarboxylic acidの投与により、大脳でのDNA断片化は完全に抑制され、線状体、海馬でのDNA断片化は部分的に抑制された。Non-NMDA型受容体拮抗剤であるGYKI52466とcalpain阻害剤であるleupeptinも同様の抑制効果を示したが、NMDA型受容体拮抗剤であるMK-801は抑制効果を示さなかった。またNOS阻害剤である7-Nitroindazoleは抑制効果を示さなかったが、免疫抑制剤であるFK-506は著明な抑制効果を示した。以上より、全脳虚血による遅発性神経細胞死には、non-NMDA型受容体を介する刺激や、calpainによるproteolysis、何らかのimmunoreactionが関与していることが示唆された。また、neuronal NOSを介するNOの産生はあまり関与していないと考えられた。現在、神経細胞死に関わるimmunoreactionの機構について特異抗原を用いて検討中である。 現在、ラット局所脳虚血モデルにおいて各種アポトーシス関連遺伝子(ICE family)の発現を遺伝子、蛋白レベルにおいて検討中であり、さらにマウス一過性脳虚血における虚血性神経細胞死の機構の解明のため、アポトーシス関連遺伝子欠損、または過剰発現マウスにおける神経細胞死を検討中である。
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