研究概要 |
以下の実験により、脳虚血においては強力な血管拡張作用ならびにフリーラジカル活性を有する一酸化窒素(NO)の産生が増加すること、フリーラジカル消去剤であるsuperoxide dismutase(SOD)が微小循環障害を改善すること、また末梢血白血球がフリーラジカルの産生原となりうることが示された。 1)脳虚血におけるNO代謝の検討 ラット一側中大脳動脈の閉塞および閉塞解除後に頸静脈血を採取し、グリース反応によりnitrate(NO_3^-)およびnitrite(NO_3^-)を定量した。その結果nitrate(NO_3^-)は虚血2時間後に有意に増加し、再灌流30分後にさらに増加した。nitrite(NO_3^-)は有意の変動を示さなかった。nitrate(NO_3^-)の増加はN^G-nitro-L-arginine(L-NAME,20mg/kg)の投与により抑制され、これにL-argを追加すると抑制が解除されることから、血中nitrate(NO_3^-)の増加がnitric oxide synthase(NOS)の活性化によるものと考えられた。 2)SOD投与による微小循環障害の改善 ラット一側中大脳動脈閉塞モデルにおいて閉塞3時間後にrecombinant human Cu,Zn-SODを投与し、蛍光標識血漿法により中大脳動脈領域の脳内微小血管を観察したところ、Cu,Zn-SODの投与は虚血による血漿灌流血管総長の減少を有意に抑制した。 3)虚血脳切片の活性酸素産生に対する白血球の関与 Cyclophosphamideにより白血球減少ラットを作成し、一側中大脳動脈の閉塞後大脳半球を摘出し極微弱化学発光を測定した。その結果白血球減少ラット(末梢血白血球数 1,180/mm^3)では正常ラット同(5.180/mm^3)に比べ極微弱化学発光が2分の1以下に減少した。
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