研究概要 |
1.臨床像の特徴 日本小児脳神経外科学会員の協力を得て15家系30症例の臨床データを分析することができた。その内の自験1家系5症例では、胎児エコーの結果最も早い例では在胎21週で脳室拡大を検出した。合併奇形としては、全例で脳梁形成不全、3例で母指の内転屈曲を認めた。2例で脳室腹腔シャントを行ったが、術後一側脳室の縮小および波状の脳室壁不整を認めた。長期生存者は1例のみで、1例は乳児期死亡、2例は胎内死亡し、1例では妊娠中絶が行われた。剖検は3例で行ったが、中脳水道狭窄は認めなかった。したがって本症における水頭症の原因は、最近指摘されているように、中脳水道狭窄に起因するものではないと考えられる。 2.分子遺伝学的研究 近年の分子遺伝学的研究により、本症の原因遺伝子座位がXq28に存在することが明らかとされた。さらにXq28に存在するneural cell adhesion moleculeの一つであるL1遺伝子に関する検索が近年進み、本症では現在までにL1における遺伝子変異が3つ、すなわち(1)Rosenthalら(Nature genetics2:107,1922)、(2)Campら(Nature Genetics 4:421,1993)、(3)Jouetら(Nature Genetics 4:131,1993)により報告されている。私達は上記の自験1家系でこれらの報告されている遺伝子変異を追試してみたが、同一の変異を確認することができなかった。現在他の家系を用いて検討を継続中である。
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