研究概要 |
Medulloblastomaの予後に関して、変異p53遺伝子の発現を認めたmedulloblastomaでは,NGF-R陰性症例を多く認めた。さらにNGF-R陽性medulloblastoma細胞では,NGF処理により細胞増殖の抑制と細胞分化の誘導が示された。特にhigh-affinity NGF-Rであるtropomiosin receptor kinase (trk)陽性medulloblastomaでは陰性症例に比べてその予後は良好であった。Medulloblastoma細胞(MED-3)より、low-affinity NGF-R陽性細胞とtrk陽性細胞を選択分離しNGFに対する反応性を検討すると、trk陽性細胞のみがNGFに反応して細胞分化が誘導され、medulloblastoma細胞の分化におけるtrk遺伝子の関与が示された。Medulloblastoma組織におけるin situ hybridizationの結果、変異p53と正常型p53遺伝子産物の発現と、患者の生命予後、再発までの期間、治療に対する反応性との間に明らかな相関は認められなかった。 以上の結果より、Medulloblastomaなどの小児悪性脳腫瘍では高頻度にp53遺伝子の変異が認められ、細胞増殖能との相関が示されたが、患者の生命予後、再発までの期間、治療に対する反応性との間に明らかな相関は認められなかった。その反面、high-affinity NGF-Rであるtrk遺伝子はMedulloblastomaの細胞分化機構に関与しており、さらにその発現と生命予後との間に相関が認められた。以上より、Medulloblastomaの分化誘導療法において、trk遺伝子を標的とした研究を進める必要性が示唆された。
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