研究概要 |
【目的】悪性グリオーマの薬物療法において、cisplatin封入cholesterol-AECM-pullulan被覆liposome(CHP-Lip.CDDP)が有効な治療手段となり得るか否かをラット脳腫瘍モデルを用いて検討した。【方法】(1)生体内分布:Fisher344ラット大脳半球に9L-gliosarcoma cellを移植後、内頸動脈よりI群:200nm CHP-Lip.CDDP、II群:400nm CHP-Lip.CDDP、III群:200nm conventional Lip.CDDP、IV群:Free CDDPを投与し、1,3,6時間後に脳腫瘍、各臓器のPt.濃度を測定。(2)抗腫瘍効果:移植後7日目にA群:200nmCHP-Lip.CDDP、B群:FreeCDDP、C群:生食2mlを左内頸動脈より注入(CDDP dose:2mg/kg)、14日目にBrdUを静注後屠殺し、腫瘍重量、BrdU標識率、各臓器の組織学的変化等を比較検討した。【結果】脳腫瘍のPt.濃度は、I群で各時間を通じ他の3群より3〜7倍と高く(p<0.01)、血中濃度はI、III群で高値を示した(p<0.05)。治療後7日目の平均腫瘍重量は、A群は163mgで、B群の299mg、C群の362mgに比し有意な低値を(p<0.05およびp<0.001)、BrdU標識率もA群の腫瘍で低い傾向を認めた。【結論】chol.-AECM-pullulanには、脳腫瘍、おそらく腫瘍血管内皮細胞に対しある程度のaffinityを賦与する作用があり、その結果封入cisplatinの抗腫瘍効果が増強されるものと考えられる。
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