研究課題/領域番号 |
05671172
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
河内 正人 熊本大学, 医学部, 講師 (70178218)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 医学部, 助教授 (20145296)
生塩 之敬 熊本大学, 医学部, 教授 (20028583)
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キーワード | 神経膠腫(グリオーマ) / 髄腔内潅流化学療法 / ACNU / 髄腔内播種 / リポソーム |
研究概要 |
悪性脳腫瘍髄腔内播種に対するACNUによる髄腔内潅流療法の基礎的実験として、犬を用いて人工髄液10mlに溶解したACNU 1mgで側脳室-腰椎くも膜下腔潅流を行い、腰部髄液中にグリオーマ細胞に対して2ないし3-log cellkillを達成できる濃度のACNUを検出する事が出来た。しかも潅流を週一回、10週連続行っても脳脊髄の組織学的変化はほとんどみられない事が判明した。これに基づき悪性脳腫瘍の髄腔内播種患者15名にACNUによる側脳室-腰椎くも膜下腔潅流を行い、排出させた腰部髄液を経時的に採取し、高速液体クロマトグラフィにて髄液中ACNU濃度を測定した。ACNU投与量は犬と人との髄液腔内容積比1:10から10mg/100mlとした。その結果、髄液中ACNU濃度はACNU点滴投与終了時前後で最高に達し、排泄相はlinear kineticsをとることが判明し、半減期は10.7から26.4分であった。また台形公式により髄液中濃度曲線下面積を求めると270.7から553.6mugxmin/mlであった。これらの髄液腔内薬物動態は犬の実験で得られたものと同等であった。また臨床的に重篤な副作用はみられず、剖検例における組織学的検討でも髄液腔内潅流によると思われる変化は側脳室上衣の軽度の脱落のみであった。15例の患者にこの治療を行い有効率は55%であった。問題点として大脳半球円蓋部への薬剤到達が悪い事が判明し、同部への薬剤分布を改善する方法として、ドラッグキャリアとしてリポソームを用い、髄液中でのACNUの半減期を延長させることを検討している。すでにリポソームによるグリオーマ細胞への影響を増殖抑制試験により検討し、リポソーム単独ではその増殖に影響しないことを確認し、ACNUを包埋したリポソームによりグリオーマ細胞の増殖抑制を検討している。またラツトを用いてリポソームの髄腔内投与を行い、それ単独では毒性がないことを確認した。今後ACNUを包埋したリポソームの髄腔内投与による毒性実験を行い、さらにグリオーマ髄腔内播種モデルによる治療実験へと進めていく予定である。
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