研究課題
悪性脳腫瘍を代表するグリオーマは全身血行転移することは少ないが、しばしば髄液腔内播種転移する。最近グリオーマの治療成績が向上し、延命が得られるに伴い、髄液腔内播種転移のために失う症例が急増している。そこで、私たちはグリオーマの第一選択薬であるACNUによる髄液腔内化学療法を検討してきた。bolus injectionでは有効な髄液腔内薬物濃度が得られないことより、ACNU髄液腔内潅流療法を検討し、動物実験の結果から副作用なく腰部髄液腔内に有効な薬物濃度が得られることを明らかにした。また髄液腔内播種転移の患者に対してACNUの髄液腔内潅流療法を行い、副作用なく安全に施行でき、腰部髄液腔内にも治療濃度のACNUの分布を達成できた。しかし大脳半球円蓋部くも膜下腔への薬物分布に問題があり、本年度はより理想的な髄液腔内薬物分布を得るためリポソームの利用を含む薬物投与を検討した。またACNUと同じニトロソウレア系であるBCNUの髄液腔内化学療法を検討した。フォスファジルコリンとツイーン20からなる複合リポソームはin vitroにおいて人血管内皮に障害を与えず、in vivoにおいてラットの髄液腔内投与にて神経学的、組織学的に変化を認めず、ドラッグキャリアーとして有用であることを明らかにした。BCNUはACNUと違い脂溶性溶液に溶解する必要があり、髄液腔内投与に適さないとされてきたが、リポソームに包埋することにより人工髄液に溶解し、in vitroにおいて脳腫瘍cell lineに対して増殖抑制効果があることを明らかにした。
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