研究概要 |
ラットの一過性局所脳虚血モデルを作成し、経時的に実験用MRI装置で虚血性脳浮腫と血管透過性の変化を観察し、アポモルフィン誘起回転運動を指標とした運動機能障害評価を行った。また、線条体-黒質における神経細胞やグリアの変化を免疫組織学的に検討し、以下の結果が得られた。 1)MRI所見:虚血時間が長い程早期から虚血側中大脳動脈領域に虚血性脳浮腫が出現し、15〜30分の虚血では線条体外側にのみ一過性のT2高信号が認められた(Neurol Med Chir.,in press)。虚血によって血液・脳関門が破綻するだけでなく、血液・髄液関門も一過性に破綻することを明らかにした(Brain Res.633:305-311,1994)。 2)免疫組織学的検索:短時間(30分)虚血で線条体背外側部に神経細胞の型特異性障害がみられ、カルシニューリン陽性の中型有棘ニューロンが選択的に脱落し、大型および中型の介在ニューロンは残存した。同時に黒質網様部外側でカルシニューリン染色性が失われた(Acta Neuropathol 85:515-520,1993)。また線条体における前シナプスの神経終末に存在するシナプトフィジンの免疫染色性は虚血後一過性に増強し、その後減弱した(Brain Res.616:320-324,1993)。グリアの中では、ミクログリアの反応が虚血後早期から認められた。(J Cereb Blood Flow Metab.in press) 3)行動学的観察:線条体一黒質系に上記の組織学的変化を有するラツトではアポモルフィン投与で虚血側への回転運動が観察され、線条体における運動機能障害を反映する結果と考えられた(Acta Neuropathol.87:211-216,1994)
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