研究概要 |
ラットの一過性局所脳虚血のモデルを作成し、アポモルフィン誘起回転運動を指標とした運動機能評価を行い、経時的に脳を灌流固定後、線条体-黒質における神経細胞やグリアの変化を免疫組織学的に検討した。また虚血を受けたラットの線条体に仔ラットの線条体細胞を移植し、経時的にアポモルフィン誘起回転運動を観察し、移植から6ヶ月後に組織学的検索を行い、次の結果が得られた。 (1)1〜2時間の虚血を負荷したラットではアポモルフィン投与で虚血側への回転運動が観察された。線条体におけるカルシニューソン陽性の中型有棘ニューロンが選択的に脱落し同時に黒質網様部外側でカルシニューリン染色性が失なわれたが、軸索成長因子(GAP-43)の免疫染色性は、虚血3〜4日後に黒質網様部神経細胞で一過性に上昇しており、線条体からの抑制入力遮断で黒質神経細胞が影響を受ける過程に現われる新しい現象と思われた(Brain Research 647,333-339,1994)。 (2)虚血巣への線条体細胞移植によって、アポモルフィン誘起回転運動の有意な改善は得られなかったが、組織学的に移植片は生着しており、移植片の神経細胞は、線条体神経細胞に特有なカルシニューリンやCaMキナーゼIIの免疫染色性を有していた。また一部ながら移植された神経細胞と淡蒼球神経細胞の線維結合も確認された(Neuroscience62:695-705,1994)。
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