研究概要 |
1.ラットの右外頚動脈からナイロン塞栓子を内頚動脈に向けて挿入し右中大脳動脈を閉塞し、15分から120分後に再開通させる一過性局所脳虚血モデルを作成した。経時的に麻痺の有無とアポモルフィンによるドパミン受容体刺激後の回転運動をロトメーターで記録した。脳を灌流固定後、カルシニューリン、パルバルブミン、カルレチニン、燐酸化チロシンなどに対する抗体を用い免疫組織学的に検討した。また、虚血作成から1週間後に仔ラットの線条体細胞を虚血巣に移植し、経時的に運動機能障害評価を行った後組織学的検索を行い、以下の結果を得た。 (1)運動機能評価:対側肢麻痺は15-30分虚血では数時間以内に回復した。アポモルフィン投与後、15-30分虚血群においても虚血と同側への回転運動がみられ、60分虚血までは虚血時間が長い程、有意に回転数の増加がみられた。(2)免疫組織所見:線条体外側部に神経細胞の型特異性障害がみられることは、前年度報告した。虚血線条体において、パルバルブミン陽性細胞数は健側と比較し、著変を認めなかったが、カルレチニン陽性細胞は著明に減少しており、線条体介在細胞の中には虚血に対する脆弱性に差があることが判明した(Acta Neuropathol 89:172-177,1995)。また燐酸化チロシン抗体で染色されるミクログリアの反応が、大脳皮質のみならず黒質においても虚血後3日目から長期にわたってみられた(Glia,13:147-153,1995)。(3)神経移植:移植後の回転運動に有意な変化はみられなかったが、6カ月後の組織学的検索では、虚血線条体の移植片から淡蒼球へ神経回路が再構成されていることが確認された(Neuroscience,62:695-705,1994)。
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