研究概要 |
[目的]脳のみの局所低体温法の確立と低温による脳保護作用のメカニズムを検討する。 [方法](1)成猫に低温人工髄液を脳室脳槽灌流し脳局所低温を作成、灌流によりどの程度の脳冷却が得られるかを測定した。また、脳内に温度較差が生じているか否かを脳温度計で測定した。(2)ラット-過性前脳虚血モデルを用い、線条件におけるdopamine,adenosineとその代謝産物をin vivo microdialysis法にて測定し、常温と低温とで比較した。(3)スナネズミ-過性前脳虚血モデルを用い、海馬における遅発性神経細胞死を算出し、一方各種蛋白の生成を免疫組織化学的に検討、常温と低温とで比較した。 [結果](1)低温人工髄液灌流により成猫において脳深部に2〜3℃の冷却腔かが見られたが、皮質ではその冷却効果は少なかった。脳血流量は、灌流開始後一時減少したがその後回復した。血圧や血液ガスには影響はなかった。(2 )低体温は、(i)再灌流時のadenosineの減少を抑制する。(ii)虚血中,虚血後を問わずhypoxanthine,xanthineの増加を抑制する。(iii)inosineには影響を与えない。(iv)dopamineの増加を抑制する。(v)再灌流時のDOPAC,HVAを増加させる。(3)低体温により海馬CA1領域の(i)遅発性神経細胞死は抑制される。(ii)HPS70の発現は抑制される。(iii)c-Fosの発現は変化しない。(iv)c-Junの発現が見られるようになる。
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