悪性脳腫瘍は他の腫瘍に比べて外科的全摘出術が不可能であり、治療成績が極めて悪い。しかも、化学療法に関しては脳血液関門の存在のため従来の投与方法では制癌剤が病巣内に十分に到達しないことが、脳腫瘍の治療をさらに困難にしている。このためには制癌剤に徐放性機能を持たせ、局所投与可能な製剤を作る事である。これによって、局所の残存腫瘍を初回の治療によって制御し、さらに、集学的治療を行い得るようにする。 これらの治療により悪性脳腫瘍の治療効果を向上するためには脳腫瘍の生物学的検討が必要不可欠である。病理組織学的検索では、通常の検索による悪性度および組織診断をおこない、さらに免疫組織化学的検索を詳細に行い、腫瘍の増職能などを検索した。 これに各種の本治療による抗腫瘍効果の判定を病理組織学的に検索した。この結果、複合体を用いた局所治療を行った症例の病理解剖学的検索では本剤による腫瘍組織の壊死範囲は僅かに10mmであったが、腫瘍増殖抑制は確実に効果はみられた。また、5Fu-ラクトン共重合体の徐放性剤を作成し、悪性脳腫瘍に応用した。これについては、強い局所反応と抗腫瘍性が見られた。本剤は生体分解型であり今後有用と考えられる。一方、本治療を行った症例の予後調査において、膠芽腫4例において3年間有意義な成績を治めた。これらの症例の中で再発時の腫瘍および腫瘍周辺組織の免疫組織学的検索にて腫瘍周辺組織において反応性グリアの増生、リンパ球浸潤およびT細胞の浸潤がみられた。 さらに、補助療法であるBRM療法との併用ではその腫瘍組織内に免疫学的にT細胞の増加が見られた。 頭蓋内悪性リンパ腫では腫瘍組織内の浸潤能をGFAP陽性細胞の程度で調べ、増殖能をPCNA、またはMIB-1陽性細胞率で検索した。この結果浸潤能はその予後にはおおきな影響はおよぼさなかった。しかし、増殖能はその予後に関与していた。
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