1)悪性脳腫瘍の治療は手術的摘出、化学療法および放射線照射が主体であるが、全摘出が不可能であり、適正な補助療法の開発がまたれている。徐放性制癌剤ペレットは、高濃度の制癌剤を針状の高分子材料の中に包理可能であること、複合体の制癌剤の徐放期間が約30日まで可能である、作成は低温下で行うために制癌剤の活性がおちない、などの利点があり、一回の局所投与で大量の制癌剤を腫瘍内に投与できる方法である。今回は徐放性5Fu含有複合体を用いて、悪性脳腫瘍症例に対して、局所投与をし、その後放射線照射およびACNUなどによる化学療法を施行した。これらの治療を行なった悪性脳腫瘍と通常の治療を行なった症例の臨床病理像の検討と長期予後について検索した。54例の星細胞系腫瘍のうち12例がDDS(5Fu)を応用した集学的治療を行なっている。このうち膠芽腫よりも星細胞系腫瘍でわずかに平均生存期間が延長した。 2)神経膠腫の増殖能を免疫組織化学的方法にて検討した。Ki67のモノクロナール抗体MIB-1はホルマリン固定、パラフィン包埋切片で検索が可能となり、腫瘍全体像としての増殖能の検索が可能となった。MIB-1陽性率は膠芽腫初発例では13.7%、再発8例では14.1%で大きな変化は見られなかった。悪性星細胞腫では初発で11%、再発時には9%である。良性の星細胞腫では平均2.5%である。病理所見と増殖能とは比較的一致する。subependymal giant cell astrocytomaは良性腫瘍といわれているがMIB-1陽性率6-10%のものもみられ、これらはいずれも再発している。この様に増殖能の検索は治療にあたり、極めて重要であることがわかった。
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