MRIの検査を肘離断性骨軟骨炎の早期診断に応用した報告は少なく、本疾患の早期のMR像の特徴的な所見は不明である。このMRIを用いて野球少年を検診することによって、離断性骨軟骨炎の早期病変を検出することができるかどうか、また、これによって発症予防が可能であるかについて検討した。札幌市少年野球連盟に加入している少年野球選手を対象とした検診に参加した全選手に問診(症状の有無、ポジション、練習内容、練習時間など)を行い、さらに診察およびMRI検査を行った。MRIでは、T1撮影をルーチンに行い、T1撮影で何等かの所見が認められた場合には、健側のMRIも行い、左右差を比較した。MRIにて異常の認められた選手には両親およびチームの監督を含め結果を連絡し、原則的に投球動作の休止を指導した。以後は定期的にX線検診にて経過を観察した。少年野球選手94名を対象にして、全選手に問診を行い、さらに診察およびMRI検査(T1強調撮影)を行った。その結果、T強調像にて20肘に上腕骨小頭内に信号の変化を認めた。これら20例のX線検査では明らかな肘離断性骨軟骨炎と診断可能であったものは2例のみであった。MRIにて明らかな低信号を認めたものは7例であった。これらはほぼ全例に程度の差こそあれ、X線検査にて肘離断性骨軟骨炎と考えられた。投球動作を中止したところ、2例についてはほぼ正常に回復した。現在経過観察中の症例が5例である。
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