無蛋白培養株からの自己分泌型運動因子の分離過程が確立された。その生化学的特徴は次のとおりである。 1.Gc-4PF細胞の培養液中には、イオン交換樹脂の精製過程で2つに分離される運動刺激活性が確認できた。 2.2つの運動因子刺激活性はSDS-PAGE上55キロダルトンで等電点も同じ6.5として確認された。 3.2つの運動因子刺激活性は熱不安定で、百日咳毒素によって阻害され、ヒアルロン酸に依存しなかった。 4.いずれの運動因子活性も分泌細胞であるGc-4PF細胞の肺転移能を時間に依存的に増加させた。 以上の結果から、無蛋白培養株Gc-4PF細胞の培養液中の運動能刺激活性は、単一の自己分泌型運動因子であり、その転移能における役割を直接的に証明した。(Clin.Exp.Metast.誌に印刷中) 一方、整形外科領域の代表的な炎症疾患である慢性関節リウマチの関節液中の運動能刺激活性を検索した。 1.慢性関節リウマチの関節液中には、自己分泌型運動因子に特異的に反応するGc-4PF細胞の運動能を刺激する活性が認められ、その運動刺激活性は熱不安定性の蛋白であり、百日咳毒素によって阻害され、ヒアルロン酸に依存せず、イオン交換樹脂の結合性も上記に述べた自己分泌型運動因子のそれと一致した。 2.慢性関節リウマチの関節液中には、自己分泌型運動因子のレセプターであるgp78に結合する蛋白を認めた。 以上により、慢性関節リウマチの関節液中に、自己分泌型運動因子類似の運動因子活性の存在を証明した。(J.Rheumatol.誌に印刷中) 今後、精製された自己分泌型運動因子を用いて、モノクロナール抗体の作成を試みるとともに、転移や、炎症の場で重要な役割を果たしている自己分泌型運動因子の細胞内刺激伝達系の検索を進めたい。
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