1.5年後に確立できた白血球膜に対する不溶性粒子の反応を調べるアッセイシステムを用いて、人工関節材科以外の膜刺激物や膜内酵素の直接刺激物に対する反応性と人工関節材科に対する反応性との差違について解析した。特にハイドロキシアパタイト結晶については、白血球膜における認識機構として28KDaのタンパクが重要であることを示した(日整会誌1994年)。 2.これちのシステムにて不溶性粒子が細胞内の刺激伝達系をどのような機構で活性化するかを解析した。アルミナ結晶刺激による化学発光にはタンパクキナーゼCが必要であり、異なる粒径のアルミナ結晶刺激に対する反応差に貪食能の関与が考えられた(人工関節研究会1995年)。 3.人工関節材科に対する血清オプソニン活性の有無と白血球より放出される活性酵素生成能とを検索するために、全血化学発光法を用いて人工関節を用いた患者での人工関節材科に対する反応性と健康成人における反応性とを比較検討した。痛風患者でば尿酸ナトリウム結晶対する反応性が充進していること(高尿酸血症と痛風1993年)、Charnley型人工股関節手術後に再置換症例と初置換症例との白血球機能に差があることを見出した(人工関節研究会1995年)。 4.それ自体ではほとんど炎症反応をおこしえない低濃度のハイドロキシアパタイト結晶がヒト多核白血球にプライミングを起こし、菌血症や感染といった様々な刺激が加わった際にごく少量のハイドロキシアパタイト結晶が存在するだけで明瞭な炎症が起こる可能性があることを示した。 5.今後もリウマチ学と人工材科学という2つの学間の間にあって、より広い視野からの戦略を求められている人工関節材科粒子に対する生体反応解明に寄与するだけではなく、生体反応の少ない人工関節材科の開発、および各患者に適した人工関節材科の選択法解明のために更に研究を進めて行きたい。
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