1.人工関節材科粒子の作製 アルミナ結晶およびハイドロキシアパタイト結晶の粒子を粒径を整えて作製し、表面形状を測定した。 (1)1-5μm程度の粒径のアルミナ結晶が同一重量および同一表面積あたりで最も活性酸素の生成能が高いことを示した。 (2)高温で焼成したハイドロキシアパタイト結晶の方が活性酸素の生成能が高いことを示した。 2.人工関節材科粒子に至適粒径が存在する機序 アルミナ結晶刺激による化学発光にはタンパクキナーゼCが必要であり、異なる粒径のアルミナ結晶刺激に対する反応差に貧食能の関与が考えられた。 3.人工関節材科粒子に至適焼成温度が存在する機序 ハイドロキシアパタイト結晶刺激による化学発光には細胞外カルシウムおよび細胞内カルシウム放出が必要であり、異なる焼成温度のハイドロキシアパタイト結晶刺激に対するヒト多核白血球の反応差に白血球細胞内情報伝達としてカルモジュリンを介する系が重要であることを示した。 4.人工関節材科粒子によるプライミング それ自体ではほとんど炎症反応をおこしえない低濃度のハイドロキシアパタイト結晶がヒト多核白血球にプライミングを起こし、菌血症や感染といった様々な刺激が加わった際にごく少量のハイドロキシアパタイト結晶が存在するだけで明瞭な炎症が起こる可能性があることを示した。 5.人工関節材科粒子のヒト多核白血球膜による認識機構の解析 細胞膜成分が人工関節材科粒子の認識に関与しているかどうかを調べるために、ヒト多核白血球の膜成分がハイドロキシアパタイト結晶に対するヒト多核白血球の反応を修飾するかどうかを検討し、特にハイドロキシアパタイト結晶については、白血球膜における認識機構として28KDaのタンパクが重要であることを示した。 6.今後も人工関節材科粒子に対する生体反応解明に寄与するだけではなく、生体反応の少ない人工関節材科の開発、および各患者に適した人工関節材科の選択法解明のために更に研究を進めて行きたい。
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