研究概要 |
各種抗癌剤を投与した上でBrduとIrduを投与し免疫組織化学的に処理して、平成6年度に確立できた方法でS期時間の測定を行い、これにより得られたS期時間と実際の移植腫瘍の体積増加との相関関係を明らかにすることにより、本方法が腫瘍の抗癌剤感受性テストとして妥当かどうかを検討した。さらに、過去に当大学病院で切除された腫瘍症例についても、研究を継続した。細胞増殖マーカーとしてproliferaing cell nuclear antigen(PCNA)を使用した。また骨肉腫について、分化の指標としてはosteocalcinを使用した。その結果以下のことが判明した。 (1)ヌードマウスに継代移植中の軟部悪性線維性組織球腫(MFH)の1株については,各種抗癌剤投与により,ある薬剤のみにてS期時間が著明に延長し、またこの所見に平行して腫瘍体積より見た腫瘍増殖が抑制されることが判明した。他の薬剤ではこのような所見は得られず、以上より薬剤感受性テストとして実用的であると考えられる。現在までに種々の抗癌剤感受性テストが報告されているが、in vivoにて信頼できる方法はなく、本方法は臨床応用が可能と考えられた。 (2)骨肉腫において主要な増殖細胞はosteocalcin陽性の骨芽細胞様細胞である。 (3)osteocalcinが陰性の軟骨様細胞、線維芽細胞様細胞あるいは多核巨細胞は殆ど増殖能を持たない。 (4)非定型的骨肉腫とくに血管拡張性骨肉腫においては、増殖細胞はosteocalcin陽性にならない。つまり定型例とは増殖細胞においても異なっており、文字通り非定型的である。 (5)免疫組織化学的には肺転移巣で、骨肉腫の増殖活性が全般的に低下すると考えられる所見が得られた。
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