研究概要 |
悪性骨軟部腫瘍細胞が持つ性格(分化)を免疫組織化学的に各種マーカーを用いて検索すると同時に、3種類の増殖細胞マーカーを用いて2重染色し、腫瘍細胞の分化と増殖の関係につき検討し、以下のことが判明した。 病理診断の補助になる結果: 1.脱分化型軟骨肉腫において,主要な増殖部分はS-100陰性の脱分化部である。 2.(骨・軟部)悪性線維性組織球腫(MFH)の主要な増殖部分は、未分化な線維芽細胞様細胞である。 3.脂肪肉腫ではS-100陰性細胞が主要な増殖部分である。 4.良性軟骨性腫瘍では、軟骨への分化を持つ腫瘍細胞は殆ど増殖しない。 5.骨肉腫において主要な増殖細胞はosteocalcin陽性の骨芽細胞様細胞であり、これが陰性の軟骨様細胞、線維芽細胞様細胞あるいは多核巨細胞は殆ど増殖能を持たない。 6.骨膜性骨肉腫ではS-100蛋白が陽性になる細胞において増殖活性が見られない。これに対して傍骨性(骨膜性)軟骨肉腫では、S-100蛋白が陽性になる細胞においても、旺盛な増殖能が認められた。 予後判定因子および臨床治療に結びつく結果: 1.ヌードマウス移植ヒト骨軟部腫瘍で得られた細胞周期におけるS期時間が、症例の予後を反映する傾向が認められた。S期時間は、科学的根拠を有する論理的予後判定因子と成り得る。 2.ヌードマウス移植ヒト軟部悪性線維性組織球腫(MFH)の1株については,各種抗癌剤投与により,ある薬剤のみにてS期時間が著明に延長し、またこの所見に並行して腫瘍体積より見た腫瘍増殖が抑制されることが判明した。以上より本方法は臨床的に薬剤感受性テストとして実用的である。
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