絞扼性神経障害の病態を解明するために多くの圧迫実験が行われてきた。しかしながら、神経の直接露出した実験のため、神経周囲の正常の生理学的環境が破壊され、血流量の測定にこれらの実験モデルは適していない。そこで、神経を直接処理しない新たな実験モデルが作製できるか検討するとともに、神経内血流量について測定した。 【実験方法】 1)新たな絞扼性神経障害実験モデル 尺骨神経を露出することなく、家兎の肘関節前方より肘部管に長さ12mm、径1.2mmのscrew刺入、肘部管内の突出は2mmとした。これらの実験モデルについて家兎の尺骨神経の生理学的・組織学的な検索を行った。 2)Mackinnonに準じ、家兎の坐骨神経に対してsolicome tubeでtubingを行い神経障害モデルを作製した。このモデルで神経内血流量を測定した。 【結果】 1)screw刺入20か月で神経上膜・周膜の肥厚、周膜下で神経繊維間の繊維性結合織の増殖をを認めた。処置後22か月で大径繊維の減少・%myelinの減少を認め、髄鞘の菲薄化が観察された。処置後22か月以降の6例中1例に神経全体の変性、残りに散在性の変性をを認めた。以上の所見は絞扼性神経障害の病態の初期像と考えられた。 2)Machinnon準じて作製した絞扼性神経障害は電気生理学的・組織学的にも慢性絞扼性神経障害モデルと考えられた。神経血管の観察ではextrinsic・intrinsic vesselとも減少したが、比較的温存されていた。LDF法による血流量の測定で55%〜85%の血流を認めた。神経血流は比較的温存され、組織学的変化が阻血によるものと考えるより、神経血管関門の波綻などからくる浮腫や静脈内圧の上昇などにより起こり、この病態にこれらの変化が関与していることが示唆された。
|