膝関節に生じる荷重とモーメントに関する数学モデルの構築と実計測

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05671228
• 研究機関: 北里大学
• 研究代表者: 塚本 行男 北里大学, 医学部, 教授 (40050398)
• 研究分担者: 藤江 裕道 北里大学, 医学部, 助手 (20199300) ; 山徳 義朗 北里大学, 医学部, 講師 (70146463)
• キーワード: 膝関節 / 荷重 / モーメント / 運動自由度 / 同次変換 / ヤコビアン / 6軸力センサ

研究概要

数学的検討においては、まず、膝関節の機構を表すGrood,Suntayの座標係(以下、膝関節座標係)を、ISB(International Society of Biomechanics)で規定する、骨に対する座標軸方向の取り方に準じて、数学的に整理した。膝関節座標形を構成するそれぞれの直交座標形に生じる微小な変位に着目して、膝関節座標形のヤコビアンを算出した。このヤコビアンに仮想仕事の原理を応用し、膝関節座標形に生じる荷重とモーメントを数学的に記述することに成功した。
実計測においては、文部省科学研究費の補助により開発された膝関節力学試験ロボットを改良し、実験膝の6自由度方向に生じる変位および荷重とモーメントを計測するシステムを開発した。このシステムの制御プログラムのなかで,本研究で求めたヤコビアン、および過去の研究で求めた膝関節座標形に生じる変位に関する数学的記述である同次変換、を用いて膝に生じる荷重とモーメントおよび変位を記述した。最終的に、膝関節が日常あるいはスポーツを実行しているときに経験する変位および荷重とモーメントを膝関節座標係上で実験的に再現することに成功した。得られた結果はまだ少ないが、たとえば、前方後方に膝を変位したとき、膝を拘束した状態では、非拘束の状態に比べ、20%から40%の荷重とモーメントの増大を、各自由度方向に認めた。内外反変位を膝にあたえたときにも同様のことが観察された。また両試験において、膝を拘束したときには、膝の見かけの動揺が減少することが分かった。これらは、従来から指摘されていた臨床的結果と一致するものであった。実験数を増やし、より信頼性のある結果を得たいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] Hiromichi Fujie,etal.: "The Use of Robotics Technology to Determine Joint Kinematics" Journal of Biomechanical Engineering. 115. 211-217 (1993)
• [文献書誌] Hiromichi Fujie,etal.: "Six-DOF Forces and Moments at the Human Knee Joint:A Mathematical Description with respect to a Non-orthogonal Coordinate System" The Proceedings of the Second International Symposium on 3-D Analysis of Human Movement. 39-42 (1993)
• [文献書誌] 藤江裕道,他: "前方引き出し力負荷時の膝軟組織内張力-大きさ,方向,位置の測定-" 日本臨床バイオメカニクス. 14. 115-118 (1992)
• [文献書誌] 藤江裕道,他: "ロボティクスによる膝6自由度のハイブリッド制御-より生理的な条件下でのin-vitro動揺性試験をめざして-" 日本臨床バイオメカニクス. 14. 119-122 (1992)
• [文献書誌] Yukio Tsukamoto: "A New Surgical Approach for the Treatment of Osteoarthritis of the Knee-Biomechanical Experiment and Clinical Results" Journal of Western Pacific Orthop.Assoc.29. 89-94 (1992)
• [文献書誌] Yukio Tsukamoto: "Motion of the Bipolar Hip Prosthesis Components" Acta Orthop.Scand.63(6). 648-652 (1992)