研究概要 |
膝関節の機構を説明するモデルとして,GroodおよびSuntayの開発した6自由度モデルを用いた。このモデルに生じる変位を,同次変換を用いて記述した。同次変換には,膝6自由度の変位が含まれ、同次変換の内容が膝の6自由度の変位に左右されることを確認した。ついで,このモデルに生じる荷重およびモーメントを,ヤコビアンを用いて記述した。ヤコビアンには,膝6自由度の変位のうち,屈曲伸展と内外側方を除く4自由度の変位が含まれていた。そこで,膝に生じる荷重とモーメントの計測には,6軸力を測定するだけではなくて,この4自由度の変位を同時に計測する必要のあることが分かった。さらに,6自由度変位計および6軸力計により計測される結果から,膝関節に生じる荷重とモーメントを算出するための,座標系相互の記述を行った。 以上の数学的な検討結果を用いて,膝関節に生じる荷重とモーメントの実計測を行った。インストロン材料試験機に,固定治具を介してヒト切断膝関節を屈曲角度30°にて固定した。クロスヘッドの上下動により脛骨に前方変位をあたえ,そのときの6軸力計の出力を記録した。前方後方変位以外を0と仮定することにより,先に求めたヤコビアンを用いて,膝関節に生じた荷重とモーメントを求めた。その結果,前方力が生じるのは,もちろんのこと,近位遠位力,内外反モーメント,屈曲伸展モーメント等が同時に膝関節に生じていること分かった。この結果は,臨床的な知識に一致するものであり,膝に生じる荷重とモーメントを求める本方法の妥当性を示している,と考えられた。また,本方法を既設の生体関節力学機能試験ロボットシステムに用いて,生体関節の3次元的な力学試験を行うことが可能であることを示した。
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