1。ネコを用い、脊髄を電気刺激し、下肢の坐骨神経、腓骨神経および脛骨神経から誘発電位を記録できた。同電位は多相性(3〜5相)の電位よりなり、第一電位の振幅は約50muV、伝導速度は約70mであった。 2。脊髄の刺激部位は、頚髄部から腰髄部までいずれの部位の刺激でも、潜時が短縮して同電位が記録できた。この電位は、高頻度刺激により振幅の変化はみられなかった。 3。脊髄の部分切断を行うと、後索を切断すると電位はほとんど消失した。すなわち、本電位は、そのほとんどが後索の感覚系線維を逆行性に伝導したものと考えられた。 4。しかし、下部胸髄〜腰髄を強い強度で刺激すると、坐骨神経の所属神経根の前根からも後根からと同様に根電位が記録できた。また、この電位は高頻度刺激により電位振幅が著明に減少した。 5。脊髄を刺激し、坐骨神経、L7の前根、後根から電位を記録しながら、前根を切断しても坐骨神経からの記録電位の振幅にはほとんど変化がみられなかった。 6。結論として、脊髄を電気刺激し、下肢末梢神経から記録できる電位は、そのほとんどが感覚系線維を逆行性に伝導した電位であるが、刺激条件と記録部位を選択すれば、脊髄の運動系機能の評価にある程度は応用できることが明らかとなった。 7。今後は、本電位がいかに臨床応用できるか検討する予定である。
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