研究概要 |
人工股関節置換術後、再置換に至ったloosening症例を骨吸収の側面から、looseningのメカニズムを解明するために、セメント使用例と非使用例に分けて検討した。 1.骨吸収因子の生化学的検索 (1)血中のPGE_2量、IL-1beta,-6,-8量の測定:対照群(非loosening症例)と再置換群との間では、セメント使用、非使用に関係なく有意な差は認められなかった。 (2)末梢血よりリンパ球を分離して、培養后の上清中における骨吸収因子の測定:(1)と同様な結果 (3)再置換術時に摘出された組織の骨吸収因子の測定:摘出組織をhomogeuire后、遠心分離した上清中における結果は偽関節包に比べ、臼蓋・ステム側のinterfaceではIL-1beta,TNF-alpha、collageuase活性の値よりも、IL-6,IL-8,PGE_2量が高値を示した症例が多くみられた。機種別では、セメント非使用例に比べ、セメント使用例で高値を示した。 2.組織学的検索 摘出組織に、HE染色、CD68染色、MF1染色、抗TIUP抗体染色等を施行した後、組織のhradingを行ない、骨吸収因子との相関を検討した結果、骨吸収因子が高値を示した症例の組織では、組織球糸細胞、リンパ球、100mu以下のHDP、セメント使用例ではセメントデブリスが多く観察された。また、多核巨細胞の認められた組織ではすべてにHDPデブリスが見られており、セメントよりHDPの存在がより組織にもたらす影響が強いのではないかと推察された。 X線上認められる骨透亮像のタイプにより、各々の組織所見に違いがあることから、骨吸収の発生機序は異なるものと思われ、今後、これらの点をin vitroの実験系を作成し、骨吸収のメカニズムを立証して行きたいと思っている。
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