平成5年度研究実績の要約 PVAH膜処置群、遊離脂肪移植群、無処置(椎弓切除のみ)群の3群を作成し、各群を術後の飼育期間によってさらに3群に分け、3週間飼育群(各群4匹づつ)、3か月飼育群(各群6匹)、12か月飼育群(各群10匹)とした. 平成6年度の研究実績 平成5年度に手術的処置を行った各動物群のうち、3週間飼育群と3か月飼育群を屠殺し、手術部位の脊柱ならびに周囲の軟部組織を一塊として摘出してホルマリン固定後、HE、LFB-PAS、Laidlaw's silver、Masson's trichromeの各染色を行ない、病理組織学的観察を行った.その結果、 (1)手術操作を加えた部位の脊髄・神経根は、各群とも軸索変性、脱髄、線維化を認めなかった. (2)無処置群では硬膜上に炎症による強い細胞浸潤が見られ、周囲軟部組織の血管拡張が観察された.遊離脂肪移植群も炎症反応が観察されたが軽度であった.PVAH膜処置群は炎症が硬膜とPVAH膜の間に限定的に見られた. (3)無処置群では硬膜と線維性瘢痕組織間の癒着が明らかであった.遊離脂肪移植群は部分的に脂肪が硬膜と癒着し、一部の脂肪は線維芽細胞で置換され始めていた.PVAH膜処置群では硬膜との癒着が全く見られず、薄い滑膜様の層がPVAH膜を被覆した程度で、PVAH膜自体の形態的変化もみられなかった. (4)無処置群では硬膜と傍脊柱筋の間に拡張血管を伴った厚い線維性瘢痕組織が形成された(厚さ平均;3.2±0.4mm).脂肪移植群の瘢痕組織量は3群中最低(平均;0.6±0.3mm)であったが、脂肪自身は線維組織で置換される傾向にあった.PVAH膜処置群ではPVAH膜と傍脊柱筋の間の瘢痕組織量が無処置群より少なかった(平均;1.7±0.7mm). 平成7年度には、平成5年度に処置した各動物群のうち、12か月飼育群の屠殺、検体採取、標本作成、病理組織学的評価を実施して長期飼育群の評価を完成させ、本実験計画の総合判定を行う.
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