光線力学療法(PDT)の腫瘍治療以外への応用研究の一環として慢性関節リウマチでの治療方法を検討した。アジュバント関節炎ラットを作成し、関節炎部位でのPDTを行い、滑膜炎コントロールの有効性、及び軟骨、骨、靱帯への影響、全身作用の有無を観察した。光増感剤として明治製菓薬品工業のNPe6を、レーザー照射装置として松下電器の半導体レーザーを使用した。NPe6は静脈注入後、数時間で増殖滑膜炎組織に高い選択性を持って集積した。関節切開による直接照射により、軟骨、骨、靱帯組織に障害を与えることなく、滑膜表面組織を壊死させることが可能であった。使用した半導体レーザーは664nmの波長を持ち、組織透過性がすぐれているため、光増感剤関節内注入、体外レーザー照射による治療方法が理論的に可能である。アジュバントラットにおいて同様の実験を行ったが、PDT処置早期での死亡率が高く、また、皮膚障害は認められなかったものの、照射部位での軟骨、骨、靱帯組織の損傷が著しかった。光増感剤の濃度調製、レーザーの照射量照射方法など、臨床応用までに乗り越えるべき課題は多い。
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