予備実験として、ウサギ生体の椎間板に対するレーザー照射をおこない、髄核の蒸散が可能であることを確認した。 本法の頸椎レベルでの臨床応用を行うにあたり、ヒト頸椎のモデルとして大きさのほぼ等しいヤギ腰椎を用い、レーザー照射実験を行った。椎間板中央に独自に開発した穿刺針を用いてNd:YAGレーザーを種々の照射条件で総熱量240Jの照射を行い、サーモグラフィー及びサーモカップルにより熱分布を計測、さらに照射後の椎間板を病理組織学的に検討した。椎間板の周囲組織に及ぶ危険な熱上昇は認められず、病理組織学的にも髄核の蒸散の得られることが確認され、本法の安全性と有効性が証明された。 また、レーザー照射後の椎間板の経時的変化を調べるため、生体動物の慢性実験を現在行っている。麻酔下にヤギ腰椎椎間板にレーザーを照射し、一定期間後に屠殺し、病理学的検索を行う予定である。 腰椎椎間板ヘルニアに対するレーザー髄核蒸散法は基礎実験と平行して臨床応用を進めており、本法の適応、至適照射条件の設定、無効例に対する直視下手術の時期、長期経過観察による本法の結果について検討中である。初期10例においては60%で症状の改善を認めた。今後、照射実験による基礎データをふまえ、腰椎椎間板ヘルニアのみでなく、頸椎椎間板ヘルニアに対してもレーザー髄核蒸散法の臨床応用を進める予定である。本法の確立により、手術適応として直視下手術となっていた症例の一部に対し、より非侵襲的治療手技の選択の余地ができると考える。
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