申請者らが開発を進めてきたレーザー髄核蒸散法のヒトでの臨床応用を開始するにあたり、これまでの基礎実験の追試として動物実験を行った。1.イヌ椎間板を用いた実験では、照射椎間板の平均椎間板内圧は初圧に対し有意に減少したこと、照射後のT2強調像では照射全高位の椎間板輝度の低下がみられたが信号輝度比の変化は椎間板内圧の減圧の程度と相関は無かったこと、組織学的には髄核基質の広汎な変性壊死像が観察されたがこの部分はT2強調像での低信号領域に相当し、髄核の組織変化を水分量の変化としてMRIが画像化し得たことが確認された。2.摘出やぎ椎間板を用いた温度上昇に関する安全実験では、レーザー照射により椎間板中央のレーザー照射部位には著明な温度上昇が認められたが、椎間板周辺及び経皮針には臨床上危険と思われる温度上昇は認められないことが確認された。3.生体ヤギ椎間板のレーザー照射後の経時的変化を調べた実験では、4週、6週の屠殺群において、線維輪内層の軟骨細胞を伴う線維性組織が増殖してレーザー照射により生じた空洞部を満たしている所見が認められ、この修復過程は従来報告されてきた機械的髄核摘出術、あるいはキモヌクレオライシスにおける修復過程と、基本的に同様のものと考えられた。以上の動物実験の結果を前提として、臨床応用を進めた。臨床成績の評価を腰痛疾患治療成績判定基準を用いて行った結果、有効例は50.0%であった。これは保存的治療抵抗性で従来は手術適応と判断されていた難治例に対する成績としては、ほぼ満足すべき結果であると考える。ヘルニア型別に臨床成績を検討すると、非脱出型ヘルニア例は成績良好であることが多かった。術前画像診断によりヘルニア型を鑑別し、さらに生体力学的な諸要素を考慮にいれ適応を限定することにより今後本法の治療成績の向上が期待できる。
|