研究概要 |
関節軟骨基質に特異的に分布するglycosaminoglycan(GAG)であるケラタン硫酸(KS)の測定法を我々が確立して依頼,血清KS値が軟骨代謝の指標となる可能性が示唆されてきた。臨床結果の集積により,この仮説の妥当性が証明されつつあり,診断的応用が期待されている。現在その最大の問題点は,血清KS値変動の解釈の問題である。関節軟骨代謝には破壊と合成の問題があり,この両者を評価できる実験系の確立が,この問題の解決には必要である。そこで平成5年度は実験系を確立することを最大目標として以下の実験が行われた。 まずケラタン硫酸以外の軟骨基質としてコンドロイチン硫酸に注目し,この測定法であるDMB法を確立した。この方法は簡便で,良好な再現性を有することが確認された。ウシ関節軟骨を器官培養し,軟骨破壊と基質合成が平衡状態に達する条件を設定した。これを対照として,IL-1を添加することにより軟骨代謝の変化を検討した。この結果,IL-1は濃度依存性に軟骨破壊を亢進させ,逆に基質合成を抑制した。以上の結果より,軟骨破壊をin vitroで再現できたと考える。この系は本研究の達成に必須のものであるに止まらず,各種薬剤の関節軟骨保護作用を検討するのにも有用と思われた。
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