研究概要 |
平成6年度の目標として,軟骨破壊のKineticsの検討を挙げた.ウシ関節軟骨を器官培養し,最も強力に関節破壊を起こすことが知られているinterleukin-1(IL-1)を添加し,培養液中への軟骨基質の遊離を測定した.軟骨基質の測定には,以前より行っているケラタン硫酸(KS)測定法(KS ELISA)はもとより,平成5年度に新たに確立された色素法によりコンドロイチン硫酸の測定を行った.さらにヒアルロン酸についても測定した.種々の基礎的検討により,血清非存在下の関節軟骨が,よりIL-1に反応して軟骨破壊をきたしやすいことが明らかになったので,この条件を採用した.ウシ関節軟骨にIL-1を添加することにより,KS,コンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸などの全ての軟骨基質の遊離が時間および濃度依存性に起こることが明らかにされた.以上の結果はJpn.J.Rheumatol.に掲載予定である. 関節破壊の原因として,軟質基質の分解およびその合成抑制が挙げられる.この点につき,我々は軟質基質の破壊にはsuperoxideが関係していることを証明し,Agents Actionsに発表した.合成抑制については,KSを指標にウサギ関節軟骨細胞を対象に検討した.この結果,prostaglandin E2が重要な働きをすることを見い出し,Inflammation Res.に掲載予定である. 本年度に得られた知見を総合すると,血清ケラタン硫酸測定の意義としては,軟骨基質の破壊および合成の両者を反映しているとの結論である.今後分子サイズの検討により詳細を明らかにしたい.
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