研究概要 |
c-fosやosteonectinといった遺伝子の仮骨内発現は骨折組織においては既に観察されているが,実験動物を用いた骨折モデルでは仮骨組織の再現性に問題があり骨細胞の分化や骨組織の形成と遺伝子の発現を系統だてて分析することは不可能であった。そこで我々は未分化間葉系細胞から成熟骨梁まで種々の骨化段階を層状に再現する延長仮骨を用い,これらの遺伝子発現やその蛋白の局在を調べた。白色日本家兎の脛骨を1日1mmで10日間延長し,延長終了後経時的に仮骨部を採取し,それらを骨膜下仮骨と延長部仮骨に分けて観察したところ,northern blotting法にてc-fos mRNAは骨膜下仮骨で延長部仮骨よりも早期に(延長終了後10日目)発現し,PAP法を用いた免疫組織化学では,c-fos蛋白は骨膜下仮骨にて成熟骨梁上の骨芽細胞に延長終了後10日目に既に出現していた。延長部仮骨では未分化間葉系細胞層に達する未熟な線維性骨内の骨芽細胞様細胞からc-fosの発現が認められた。In situhybridizationでosteonectinの発現は延長終了直後に骨膜下仮骨部で最も旺盛であり,経時的に斬減した。また仮骨内の軟骨細胞にc-fosが発現して,軟骨の活性化が示唆された場合には骨形成は抑制され偽関節が発生しており,臨床上重要な所見と思われた。そこでこれらの結果を『延長仮骨形成時における遺伝子発現について』と題し第8回日本整形外科学会基礎学術集会(平成5年10月7日,松本市)において,『延長仮骨形成時におけるc-fos,osteonectinの発現の免疫組織化学的検索』と題し日本組織細胞化学会(平成5年10月29日,神戸市)において発表した。
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