研究概要 |
実験動物において骨代謝をin vivoで検索するためにこれまでよく用いられてきた骨折モデルは仮骨組織の再現性に問題があり,骨細胞の分化や骨組織の形成と遺伝子の発現を系統的に分析することは不可能であった.そこで我々は平成5年度に未分化間葉系細胞から成熟骨梁まで種々の骨化段階を層状に再現する延長仮骨をウサギに導入し,c-fosやosteonectinといった遺伝子の仮骨内発現やその蛋白の局在を調査した.その結果未分化間葉系細胞にc-fos遺伝子がまず発現し,骨芽細胞への分化が開始され,また分化が方向付けられた骨芽細胞にosteonectin遺伝子が発現し,石灰化を抑制しつつ骨基質が産生されることを明かにした.平成6年度は,ウサギに比較し入手可能な抗体やDNAプローベの種類が豊富なラットを用い,技術的にはさらに困難ではあるがその大腿骨で延長を試み,ウサギよりもさらに未分化間葉系細胞の豊富な延長仮骨を得ることに成功した.そのラット延長仮骨を用いてosteocalcin,I,II,III型コラーゲンといった基質蛋白の仮骨内局在を調べたところ,III型コラーゲンは未分化間葉系細胞層内の細胞,線維および幼若骨芽細胞に見られ骨芽細胞分化に関与,I型コラーゲンは線維性初期骨内骨芽細胞および線維に認められ骨芽細胞への分化に,またosteocalcinは石灰化しつつある軟骨細胞や骨芽細胞,骨細胞および骨基質に存在し,骨の石灰成熟化に関与していることが明らかとなった.そこでこれらの結果を『ラットを用いた延長仮骨の免疫組織学的検索』と題し第9回日本整形外科学会基礎学術集会(平成6年10月7日,神戸市)において,『延長仮骨形成時における遺伝子発現について』と題し第37回近畿大学医学会学術集会(平成6年12月7日大阪狭山市)において発表した.
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