研究概要 |
骨代謝に関する基礎研究のうち,全身性および局所性のホルモン,サイトカインによる骨形成系,骨吸収系細胞の調節機構が,細胞内信号伝達系や遺伝子発現調節領域の検索を含めて解明されつつある。低回転型退行期骨粗鬆症は、加齢に伴い骨形成、骨吸収が共に低下することから生じるが、そのメカニズムは未だ不明である。1990年に、インターロイキン-4(IL-4)の骨器官培養系における骨吸収抑制作用が報告され、骨代謝における役割が検討され始めた。昨年度、本研究において我々は、IL-4が骨芽細胞培養系において、細胞層へのハイドロキシプロリン、オステオカルシン、カルシウムの蓄積量を増加させることを見出したが、これらの結果はIL-4が骨芽細胞に対して骨形成促進作用を持つことを示唆している。我々は、加齢による骨代謝バランスの変化の機序を考える際に、骨細胞のみの加齢変化を考えるのではなく、免疫系の加齢変化が骨代謝に影響を与えている可能性を考えた。IL-4が骨形成促進作用を持ち、加齢によりT細胞からの産生が低下することが考えられることから、低回転型骨粗鬆症の発症進行機序の一部を構成すると推定された。IL-4の作用機序を包括的に理解するために,骨芽細胞によって誘導されるmRNA群を、Differential Display法を用いて検索した。この結果,IL-4によりタイプVIコラーゲンの遺伝子発現が著明に増大することが明らかとなった。タイプVIコラーゲンは、多くの接着因子、基質蛋白との親和性が高いことや、加齢により骨内の含量が減少していることが報告されており、IL-4と低回転型骨粗鬆症とを関連づける媒体になっている可能性があり、今後の研究が期待される。
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