研究概要 |
【目的】敗血症性ショックにおける各種メディエーターの果たす役割を解明するため、雑種成犬にlipopolysaccharide(LPS)を投与し、血行動態及び血中NO_2^-/NO_3^-(NOx)、endothelin-1(ET-1)、thromboxan B_2(TxB_2)、6-keto-PGF1α濃度を測定した。【対象と方法】雑種成犬14匹をセコバルビタール静注にて麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸を施行した。大腿静脈からCVPカテーテルを、頚静脈よりSwan-Ganzカテーテルを挿入し、輸液はラクテックリンゲル10ml/kg/hr、麻酔はセコバルビタールにて維持した。LPS群(n=9)と対照群(n=5)の2群に分類し、LPS群はLPS(E.coli 0127:B8,Difco社製)を蒸留水で溶解し250ng/kg/minの速度で2時間持続静注した。対照群は同量の蒸留水を用いた。血行動態(HR,MAP,MPAP,PCWP,CVP,CI,SVRI,PVRI)及び血中メディエーター濃度は、薬剤投与前、1、2、3、4時間で測定した。【結果】(1)血行動態の変化:LPS群では、MAPは1-4時間で有意に低下したが、対照群では変化しなかった。HR,MPAP,PCWP,CVP,CI,SVRI,PVRIは両群共に変化せず2群間に有意差はなかった。(2)血中メディエーターの変化:(1)NOx濃度:LPS群では1-2時間で有意に(P<0.05)上昇し、増加した濃度ΔNOxは19.1±3.9μmol/L(mean±SE,1時間)、11.2±3.5μmol/L(2時間)であった。(2)ET-1濃度:LPS群では1-4時間で有意に(P<0.01)上昇し、増加した濃度ΔET-1は、15.9±3.3pg/ml(1時間)、17.5±2.8pg/ml(2時間)、18.0±2.4pg/ml(3時間)、16.7±2.2pg/ml(4時間)であった。(3)TxB_2濃度:LPS群では1時間で上昇した。(4)6-ketoPGF1α:LPS群では2時間で上昇する傾向にあったが、有意差はなかった。対照群ではメディエーターは変化しなかった。【結論】低量LPS持続投与により麻酔犬のMAPが低下し、血中NOx濃度が上昇したことより、LPS誘発性低血圧にはNOが関与していることが示唆された。これらのことより、NO合成酵素阻害薬であるニトロアルギニンの効果を試す予定である。
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