| 研究概要 |
【目的】敗血症性ショックにおけるnitric oxide(NO)阻害薬の効果を検討するため、非選択的NO阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)と、L-NNAと鏡像構造を持つN^G-nitro-D-arginine(D-NNA)単独投与による血行動態、血液ガスの変化を測定した。また、iNOSに比較的選択的阻害作用を持つAminoguanidine(AG)についても検討した【対象と方法】バルビタルにて麻酔し、気管内挿管後、人工呼吸を施行した。大腿静脈からCVPカテーテルを、頸静脈よりSwan-Ganzカテーテルを挿入し、輸液はラクテック10ml/kg/hで維持した。
(1)L-NNA(10mg/kg)(n=4)、(2)D-NNA(10mg/kg)(n=4)、(3)L-NNA(10mg/kg)+L-arginine(200mg/kg)(n=3)、(4)LPS(250ng/kgmin,/2h)+AG(5mg/kg/h,2h)の4群について検討した。血行動態(HR,MAP,MPAP,PCWP,CVP,SVRI,PVRI)、血液ガスは、薬剤投与前、投与後1、2、3、4hで測定した。【結果】(1)L-NNA群:MAP不変、SVRI上昇(1-4h)、CI低下(1-4h)、DO2I低下(1-4h)、(2)D-NNA群:MAP不変、SVRI軽度上昇(3-4h),CI軽度低下(2-4h)、DO_2I不変、(3)L-NNA+L-arginine群:L-NNAによる初期のMAP上昇を阻止した。(4)LPS+AG群:LPSによるMAP低下を阻止することができ、CI、DO_2Iは不変だった。しかし、代謝性アシドーシスを改善できなかった。【考察及び結論】L-NNAは単独で心拍出量、酸素運搬量を有意に低下させたが、D-NNA単独ではL-NNAよりも血行動態に及ぼす影響は少なかった。しかし、D-NNAも心拍出量を低下させたことから、L-NNAの心機能抑制作用はNO以外の経路が関与していることも考えられる。L-NNAはエンドトキシンショックの低血圧を阻止するが、心拍出量や酸素運搬量を低下させるため、注意が必要である。また、AGは、エンドトキシンショックの治療薬としての可能性があるが、投与量、投与方法などさらなる研究が必要である。
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