研究概要 |
1.肺サーファクタントが活性を示すために必要な脂質成分の検索:ヂパルミトイールフォスファチヂールコリン(DPPC)、フォスファチヂールグリセロール(PG)、および不飽和脂肪鎖を有するレシチン(ヂオレイールフォスファチヂールコリン、DOPC)の3種類の脂質の組み合わせに、ブタのサーファクタント・アポタンパクを加えた半合成サーファクタントを調整し、それらの生理活性をウサギ未熟胎仔に投与した際の換気量から判定した。不飽和レシチンを含まないDPPC/PG(80/20)にアポタンパクを加えたものが投与されたウサギ未熟胎仔の換気量は、天然のサーファクタントが投与された動物の62%と有意に(p<0.05)少量であった。一方、DPPC/PG/DOPC(60/20/20)とアポタンパクからなるものを投与した場合は、天然のものとほぼ同様の換気量を発現させた。以上の結果から、天然のサーファクタントに20-30%含まれている不飽和レシチンは、生理活性に必要な成分であると判定された。また、この結果は人工肺サーファクタントの開発に資する有意義なものと考えられるので、学術誌への投稿を準備中である。 2.成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の実験モデル作成とサーファクタント補充療法の効果判定実験:成熟ラットの気道内に大腸菌由来のエンドトキシンを注入し、ARDSとみなしうる状態を作成することに成功した。また、この動物にサーファクタント補充療法を行なうと、動脈血酸素分圧や肺コンプライアンスが著明に(p<0.05)改善するという結果を得た。このことから、サーファクタント補充療法は、ARDSの治療に有効であると予測され、前述の人工サーファクタントの開発を強力に推進する必要があると考えられた。なお、この結果はCritical Care Medicine,vol.22(1994)に公表された。
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